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【ぼくらが連れて行きたい店vol.15】畑で感じた“イイもの”を伝えたい!元広告マンの移動販売八百屋(GOOD’S 8083)

2017.2.14  

魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
このコーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。

作る人と食べる人を近づける

薬院にある、日々の暮らしを楽しむ道具の店『B・B・B POTTERS(スリービーポッターズ)』。
今回ご紹介するのは、その店先に週に1回だけやってくる移動販売の八百屋さん『GOOD’S 8083(グッズやおやさん)』です。畑で農家さんを手伝って感じた「野菜の背景」を伝えることや、「“イイもの”の価値基準とはなにか」をお客さんと一緒に考えていくことを大事にしています。

そんな『GOOD’S 8083』の創業は2014年。店主の富松祥太さんに、お店のこれまでとこれからについてお話を伺いました。

−どんな野菜を販売しているのですか?

「実際に自分が農家さんの畑に立って一緒に農作業をして、人生やいろいろなお話を伺った上で、共感する農家さんのお野菜だけを販売しています。基準は“愛情たっぷりで、自分が食べたいもの、大切な人へ届けたいもの”かどうか。お店の屋号は『Organic Market GOOD’S 8083』と“オーガニック”とつけていますが、“本質的な”という意味で必ずしも無農薬や有機農法とは限りません。

無農薬というのは“売れるワード”。だけど僕にとっていい野菜というのは、それだけじゃないんです。農法の言葉の定義では見えない、野菜たちを愛でながらその命に向きあっている農家さんたちの野菜を、一般的な言葉の定義ではない僕自身の言葉で届けていきたいと思っています。地元で採れた旬のものを扱っているので、いつでもなんでもあるわけでもありません。

“スーパーにはあるけど畑にはない”という事実を伝えていくことも、『GOOD’S 8083』ならではのサービスなんです。たとえばほうれん草は時期が早いとまだ味がのっていないけど、そういうものなんです。うまい時期だけ売るのではなくて、波もそのまま伝えています」

−どうして八百屋をはじめたのですか?

「以前は広告の仕事を11年間していました。広告って“イイものですよ!”と大声で叫ぶような仕事で、ずっと走り続けて、あるときにもう走れなくなったんです。“イイもの”を売って人を幸せにするはずが、いつのまにかたくさん売るための広告になってしまった。それで、自分がイイと思うものづくりを、その背景も含めてまっすぐに伝えたいと思ったんです。

それで行きついたのが食、野菜でした。昔から自然や畑が大好きだし、人はたとえ住む場所や着るものがなくても生きていけるけれど、食べものがなくては生きていけません。

一番大切だと思ったんですね。それに食べることは生かすこと。食べ物を生産しているだれかの役にもきっと立つ、お野菜を食べている人自身こそが、必ずどこかの誰かを支えているはずだと思って。
そうして、ものづくりの背景や、つくり手さんのこと、物事の価値基準などをお届けしたくて八百屋さんになりました。伝えるためにも、自分自身が土に立って命に触れて、農家さんの仕事をまるごとしっかりやって、日々の中で自分が感じていくことが欠かせません」

−どんなことを伝えていきたいですか?

「それぞれが判断する基準を持って、創造することを想像して本質を見極めようとする人が増えたらいいなと思います。誰かが間違っているわけでも、誰かが正しいわけでもないけれど、“一人の選択”の集まりが世の中をつくっています。自分の選択を大切にしてほしい。だからこそ、僕はきちんと判断材料を伝えていきたいと思います。

たとえば、お野菜が高くなるというニュース。この事実の背景にはどんなことが詰まっているのだろうと思うことがあります。ある大雪のときに、畑の雪対策のためにビニールトンネルをはる作業を農家さんと一緒に暗くなるまでやったことがあります。だけど雪がものすごく降った結果、いくつもの農家さんが“全滅たい”と。農家さんだけがありがたい存在だとは全く思いません。だけどそれでも前向きな農家さんの姿に心を向けられたとき、“こんなにも守られているんだ”と僕には感じられました。

だけど農家さんって大変だぞ、ということに偏るつもりもありません。農家さんも、お客さんも、野菜も、みんな平等でフェアな関係をつくっていきたいですね。野菜を愛でる農家さんの姿も伝えたいし、逆にお客さんが売り場でどうだったかとかも農家さんにも伝えたい。お客さんから“美味しかったよ!”と送っていただいた写真を農家さんに見せたりもするんですよ」

−これからどんなお店にしていきたいですか?

「実は明確な将来像とかは無いんですよ。だけど“イイものはイイ!”って言い続けたいですね。ウソはつきたくない。

僕らがイイと思う野菜を選択していって、それが集まれば、無農薬でつくる農家さんもきっと食べていけるようになります。無農薬栽培は大変なので、食べていくことができずにやめてしまうのが現状です。

もともと、作る人側か受け取る側かというのは無くて、みんなつながって1つだと思っています。人が人を想って、イイものが評価される、やさしい世の中になるようなきっかけの1つになれたらいいなと思います。

やりたいことはいろいろあります。今までも保育園やお子さん向けの料理教室にて、食育につながる(例えば、畑での人参の生育過程やカタチや大きさの異なる人参*4本足の人参など*を実際に見せて、その場で食べたりする)紙芝居形式のお話会などをやってきたのですが、今度は子どもたちを招いて、畑でも伝えていきたいなと考えています」

『GOOD’S 8083』は野菜や畑について丁寧に伝えて、作る人と食べる人を近づけるやさしいお店でした。いつでもお店があるわけではありませんが(水曜日だけ)、タイミングが合えばぜひ富松さんと野菜たちに会いに行ってみてください。

【Organic Market GOOD’S 8083】
https://www.facebook.com/goods8083/
福岡県福岡市中央区薬院1丁目1-8
B・B・B POTTERS 駐車場
営業時間:毎週水曜 11:00〜20:00

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板村成道
山口県宇部市出身。
2011年に東京から移住。大分と熊本での暮らしを経て、2014年から福岡市在住。移住計画のライティングやWebディレクションに関わりながらソーシャルウェブマガジン『greenz.jp』などでもライターとして活動。