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【ぼくらが連れて行きたい店vol.07】「今こそフロンティア・スピリット。」(IBIZA SMOKU RESTAURANT)

2016.8.30  

魅力的なお店、また行きたくなるお店って何だろう?
それは提供される商品(サービス)の質?もちろんそれもあると思います。でも“誰が手掛け、どんな想いやコンセプトでやっているのか。その人に会いたいから行く、その人が手掛けたお店だから行く”これが一番の動機になるのではないかと思うのです。
このコーナーでは単なるお店の紹介ではなく、“人”にフォーカスしてお店を紹介していきます。


ここで生きる。

前々回ご紹介した【ぼくらが連れて行きたい店vol.05】の『里楽』さんからほど近いところに今回紹介する店がある。両側に杉木立が迫ってくる谷筋の一本道を奥へ奥へと進み、川沿いの光が差し込む場所。そこが、目的地の『IBIZA SMOKU RESTAURANT(以下、IBIZA)』だ。1988年にオープンし、それから30年近くに渡り、このひめはる地域のフラッグのような存在であり続けてきたIBIZA。料理を待ちながら、暫しの間、2代目としてこの地に根をはる尾花光さんの話に耳を傾けた。

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-ここは山中の谷川沿いにあるので、川からの涼風が本当に心地良いですね。都会からのお客様が、ゆっくりとリフレッシュしにいらっしゃるのもわかる気がします。しかし4年前の集中豪雨では大変な被害だったと記憶してますが、このテラス席はじめ、かなり復旧されましたね。

「そうですね。あの時の集中豪雨では、テラス席や暖炉があったコーナーなども相当流されましたね。1/3ぐらいが駄目になりました。ちょうど子どもがもうすぐ生まれるというところで・・・。んー、どうなるかと思いましたけど、コツコツとやってきて今はようやくこんな感じですね。まだまだですけど。あの時に生まれた上の子が4歳になりました。下の子も生まれて、2人の父ちゃんです。高校時代を東京で過ごしてこっちへ戻ってきて17年。合間に福岡市の薬院にある『IBIZARTE』(*姉妹店・現在は光さんの兄である一平さんが営む)にも6年携わっていたんですけど、もちろんこっちの事も関わっていたので、ほぼ人生の半分をこの店とともに過ごしている感じですね」

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*改装で蘇った店舗外観

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*店舗内観

-ちなみに、卒業してから17年、集中豪雨から4年・・・本当に濃密な時間をお過ごしだと思います。「今更?」の質問かとは思うのですが、高校を卒業して都会に残らずに、うきは市へ戻ってこられたのはどうしてですか?

「やっぱりここで生まれて育って思い入れもありますし、うきはが好きですね。ほっとします。親の世代が開拓してきて、今度は自分たちの世代でやっていかなくちゃいけない事もまだまだあります。例えば木の事もね。こっちに来る時にわかったと思うんですけど、杉ばっかりなんですよね。でも、そうじゃなくて、広葉樹を植えていきたいと思ってます。山に生かさせてもらっているんで、これからは僕ら世代が還元していかないと」

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―なるほど。今のお話を伺うと、地域全体の事も考えておられるのだと思うのですが、この集落には今のところどれくらいの方々が住んでらっしゃるんですか?

「ここ、注連原っていうんですけど、集中豪雨前には7軒あった世帯数が、この夏は3軒になりました。やっぱり自然災害があったりすると[山に住み続けるかどうか]という事を考えるんでしょうね。移られたところは、市の平野部に住んで、畑仕事をするために上がって来てます。それはやっぱりその家庭ごとの判断ですから。僕たちがどうこう言えるものではないですよね。それとこの谷筋で消防団もあるんですけど、今は7名ですね。あとはうちのスタッフが3人いて、そのうち2人が住み込みです。他の1人はこの谷筋の地元の方です。そうですね・・・ひめはる全体で考えても、住む人は減ってきていますね。一方で移住してきたい人もいる。そういう人が、空いている家をスムーズに借りられるようになると良いですよね」

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*「棚田百選」に選ばれたこともあるひめはる地域の棚田

-3軒ですか。地域のコミュニティーという事を考えると、頑張り時というか踏ん張り時というか・・・このお店が、ここにあり続ける事の意義についても考えてしまいました。

「そうですね。例えばうちのお客様で言うと、通りがかりの人ってまず来ないです。ここを目的地にして1日ゆっくりとした時間を過ごそうとするお客様が殆どで、その方たちがいらっしゃるのが土日なんですね。でも、土日だけスタッフを、というわけにはいかないですよね。平日をどうするか。ハムやソーセージの加工に力を入れているのは、そういう目的もあります。食のセレクトショップのバイヤーさんとの出会い*だったり、ふるさと納税のギフトで知っていただいたり、やっぱり店舗を営んでいく事ができないと厳しいですから、地域を支えるためにも、こういう出会いはありがたいです。でも、自分たちで納得出来る事をやるだけです。まずはとにかく、僕たちなりのやり方でやるしかないんですよね。地域全体の事も考える時には来ていると思うんですけど、まずは自分たちの事をきちんとやらないといけないと思ってます。やりたい事もあります。まずはここ10年。10年後、子どもたちも大きくなっている頃までにどうにか新しい事を始めたいなと。そう考えると、残された時間は長くないですよね。でも、この谷筋が残っていくためには、観光で外から人を呼び込むしかない。とにかく、ここで踏ん張らないといけない。そんな10年になると思います」

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*IBIZAのハム等6種類が、現在食のセレクトショップ『DEAN&DELUCA』でも取扱われています。

自然への感謝。恵みへの感謝。

―ご両親が開拓され、光さん世代がバトンを受け取ったIBIZAですが、お父様がスペインで出会ったベーコンやハムの味を再現すべく燻製に取り組まれたのが始まりでしたね。今はパン作り、そしてレストラン、ウーファーの受入れなど、本当に色々な事をされています。心がけておられる事は何でしょう?

「やっぱり自然へ感謝して、地元の素材を使って作る事でしょうか。素材を生かす。合成着色料や化学調味料は使わない。なるべく地元の知っている素材、例えば肉もですね。安心して美味しく食べてもらえるような、そういうものを提供したいと思っています。料理もね、まだまだやりたい事があるんです」

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*ハムやベーコンなどは製造から熟成まで、全て自分たちの手で行っている。パンも石窯で焼いた自家製パンだ。ジャムやマスタードも同じく手作り。

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*スタッフやウーファーの皆さんと

親子2代で築き上げてきたIBIZA。豪雨でダメージを受けた注連原地区の更なる過疎化を防ぎ、いつか3代目へとバトンを渡す事が選択肢となるような・・・そんな環境を守るためにも、「今、頑張らなければ」という尾花さんの穏やかだけれど熱い想い。自然の恵みに感謝して、自分たちらしく生きていく事を選んだ尾花さん。そんな尾花さんの料理と出会う小さな旅に出かけて欲しい・・・そう思うひとときだった。

【IBIZA SMOKU RESTAURANT】
http://ibizasmokerestaurant.com

福岡県うきは市浮羽町田篭719
TEL:0943-77-7828
営業時間:11:00〜17:00(L.O.)
定休日:火曜日+不定休

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高木 亜希子
千葉県出身。
うきは市浮羽町で自然卵の養鶏を営む【ゆむたファーム】の嫁。また【あきこ商店】として筑後地方の食に関わるヒト・モノ・コトを伝える活動をしている。